30代、起業をテーマにしたウェブマガジン『東京IT図鑑』を開始

2014年4月1日

  • 青木 崇行さん
  • Soko Aoki
  • Kadinche Corporation CEO
  • 2014.4.1
  • No. 001
  • interview: Koki Okamoto
  • photo: Yoshiaki Oshiro
  • writer: Saori Yamamori
30代、起業をテーマにしたウェブマガジン『東京IT図鑑』を開始 ■発展途上国への技術提供と仲間が起業のきっかけ 起業する前は、ソニー株式会社(以下、ソニー)で技術を作る研究者として、テレビの高画質化アルゴリズムや映像の新しいアプリケーション作りなどの研究をしていました。大企業では研究しても表に出ないものがたくさんあり、自分たちが作ったものが社会に出ているという実感があまり感じられませんでした。 しかし、研究開発をしている中で作られた技術が社会に出ないことに意味がないと感じ始め、自分たちが作ったものが社会実装される環境にいたいと思うようになりました。 新しい価値を生み出したい、技術を作り、社会に「驚き」を提供できるものを形にしたい。ソニーを辞めて大学に戻ることを決めました。 そして、大学での研究期間を終え、研究を続けるのではなく起業するという選択をしました。その理由は2つあります。 1つ目は、発展途上国へ技術提供をしたかったこと。その想いは大学時代から続けているNGO活動を通じて生まれ、センサーネットワークを発展途上国の経済発展のために提供したいと思っていました。 2つ目は、研究チームとなる仲間です。現在、会社で一緒に研究をしている自分たちのチームであれば理想的な研究もできるし、社会に役に立つ技術を作り出せると思ったからです。世の中のニーズに対して、必要とされるテクノロジーをこのチームであれば提供できると思いました。 実際に、社会に提供できた技術の第1号は、panoplaza(パノラマバーチャルショップ・ツアー)です。 (参照URL:http://www.panoplaza.com/) ■ 世の中のニーズにフォーカスした『目的なき会社づくり』 そのような2つの理由から起業した弊社は、「これを作りたい」という目的が明確にある会社ではありません。 目的ではなく、チームで社会に対して何を生み出させるかが重要であり、世の中のニーズに応えられるかどうかがポイントになっています。 大ヒットする商品というよりも、少しでも社会で役に立つものを継続的に出し続けていきたいです。 しかし、会社としては売上をあげることも大事なので、技術者が研究開発をする時間を取りつつ、売上を上げていくことをいつも考えています。 ■新規サービスを生み出す秘訣は『受託研究』 受託案件については「面白そうなもの」を受けています。プロダクトを作るというよりも多くは研究を受託するという形で、一般的な開発はあまり案件として入ってきません。具体的には、メーカーの研究所、国立の研究所、大学の研究機関からの受託研究が多く、世の中の流れとしてメーカー等の研究機能の低下や設備投資の減少もあり、そういった企業様からの依頼が多くなっているのではないでしょうか。 受託研究の結果、自社に残ったノウハウを活かして製品化しても良いという契約でプロジェクトを組むことが多く、自社でサービス化することもあります。現在、受託している研究内容については、大半が空間表現に関するものです。 空間表現技術のロードマップは、ちょうど2Dの写真からスタートし3Dメタバース(セカンドライフの実写版のようなもの)まで持って行くというところです。 その過程の中にパノラマの静止画、パノラマの動画、点群データによる空間表現があります。 その他、パノラマを高解像度にするという研究も行っていますが、主軸はインターネット上での空間表現であり、2D・3Dの応用研究です。 自社でハードを作ることは通常ありませんが、ガジェットを組み合わせて、連携するようなソフトウェアを作る可能性は今後あると考えています。 ■『空間表現技術』を活用した企業収益への貢献 自社サービスであるpanoplazaが、クライアント様の収益に対して貢献できていると感じる部分は、バーチャルショップにおける新規の売上獲得です。インターネット上にバーチャルショップを構築することにより売上獲得の機会を増やすことができ、お客様自身でバーチャルショップをプロモーションすることによりEC売上増加を見込むことができます。また、あるお客様はPanoPlazaを新規店舗のVMDチェックに活用することで、これまで店舗開店時にかかっていたVMD担当者の店舗確認に係る人件費、交通費等の販管費削減を図り営業利益段階における増益のお手伝いをさせて頂いています。2014年1月現在の自社サービスであるPanoPlzaにおけるクライアント企業の業界構成は、小売業界が最も割合が高く、次いでイベント業界、不動産業界となっています。 上記サービスと合わせて現在、弊社のシステムを応用して提供していますバーチャルイベントのシステムでは、リアルだけではなくバーチャル空間におけるお客様へのコンタクトポイントが増えるためイベント自体の認知度向上に繋がることで、将来的な売上高の獲得施策として利用されています。 ■インフラに依存するパノラマ技術 youtubeなどの動画の進化が遅いので、IT業界の進化はあながち早いとは言えないと思っています。同じIT業界でも進化の早いところと、そうでないところがあるのではないでしょうか。 ブログなどのテキスト関連は進化している分野です。進化できるかどうかには、インフラが整備されているかどうかが関わっています。 動画などはそうですが、サーバーやネットワークに依存する部分が大きいと進化しづらいのが現状です。故に、インフラが整っていない途上国などでは、やはり進化の速度は落ちます。しかし、近年の傾向を見るとパノラマの静止画は、途上国でもそろそろ実装できるレベルになってきたと感じています。ちなみにインド、タンザニア、南アフリカ、東欧などの途上国からもバーチャルショップやバーチャルツアーを構築したいという問い合わせを頂いています。 パノラマ技術については、色々な会社が興味を持ち始めているので、今後様々なかたちで普及して行く可能性を感じます。具体的には、施設の管理や、店舗の管理などで使ってくれるようになるだろうと期待しています。テキストと静止画で管理していたものが、空間管理になるようになり、より直感的なものになるでしょう。 ■最近ワクワクしたこと 最近1番ワクワクしたことは、シリコンバレーへの視察です。自分たちも東京に拠点を置くITベンチャーなので、世界から注目され実績を出し続けているシリコンバレーを肌で感じたいと思って足を運びました。 その際に、アップル社でランチをしたのですが、社内には様々な人種の若い人たちがいたのが印象的でした。また、社内で子供が遊んでいたことに驚きました。外部の人でも社内に入れるオープンな会社という印象を受け、日本の会社とは正反対だな、と感じました。 シリコンバレーは都市とは離れた田舎にあり、ぽつぽつと離れた場所に会社があります。まるで、山にこもって開発しているようでした。そんな環境から、グローバルなサービスを発信しているとは驚きですが、研究する環境としては良いのかなと感じました。 ■最近ふと感じたこと 私には研究者としてのキャリアはありますが、経営経験がないので経営的な素養のある人が経営者だったらこの会社はどうなっていたのかなと常々思っています。シリコンバレーなどのベンチャー企業には経営経験がない経営者の会社はたくさんあるだろうし、それが特別なことではないと思いますが、私ではなく別の人が経営者だったらどうなっていたかということを考えます。 そうは言っても経営者という立場にいる以上は、自分が勉強し努力を続けていくことが大事だと思っています。 ■ 心に残っている言葉 ソニーを辞めて大学に戻ったとき、時間があったので本をたくさん読みました。 1日の過ごし方としては、サーフィンをして、本読んで、大学に行くという感じでした。そのときによく読んでいたのは革命家の本で、代表的なものとしてダライ・ラマやチェ・ゲバラです。 その中で、心に残っている言葉はチェ・ゲバラの「ゲリラ戦争」という本の中に出てくる「打撃は絶え間なく与えなくてはならない」と、ダライ・ラマの言葉で「人生の目的とは幸せになることである」です。 今でもそれら言葉を大事にしています。 ■ あとがき 「誰と一緒に働くか」が、仕事をする上で大事だということに改めて気付かされました。 共に社会のニーズに対して技術を提供できると思える仲間との出会いが起業した1つの理由になっており、経営者としてたくさんのことを考えなければいけない中で「仲間の存在」が原動力になっている印象を受けました。 また、もし経営経験がある人が経営者だったら、この会社はどうなっていたのだろうという想いから、勉強と努力が必要という姿には大変感銘を受け、青木さん自身が輝き続けられる理由を垣間見た気がします。   ■ 次回のインタビュー 株式会社Studio Ousia 代表取締役CTO 山田育也さん Linkify、Linkplaza、Phroniなどのサービスを展開。サイト内のテキストを自動リンク化させる技術で世の中を変革中。 http://www.ousia.jp/ja/