『東京IT図鑑 No.5 八巻 渉さん』

2014年9月20日

八巻 渉さん(Wataru Yamaki)
Kanmu, Inc. CEO

2014.9.20
No. 005

interview:Koki Okamoto
photo:Yoshiaki Oshiro
writer:Saori Yamamori

■幼稚園のときからエンジニア

物心ついた頃からエンジニアになると思っていました。

父親がSONYでのハード系のエンジニアをしていたことも影響し、幼稚園の頃から自分でハンダごてを使ってファミコンを直したりしていて。コードが断線した際にハンダごてと鉛でくっつけて直していましたね。その頃からエンジニアになると思っていました。しかし、これからはハードではなくソフトだなと思い、中学2年生頃からプログラミングを始めました。なので、IT以外で仕事をすることは考えたことがありませんね。今の仕事には就くべくして就いたという感じしょうか。



■金融業界のITに衝撃を受ける

ITの中でも、人工知能や情報を使ったビジネスをやりたいと思っていました。

それらと相性が良いのは金融系だと考え、勉強をするために大学3年生の頃に投資銀行などにインターンをしました。その中で、情報系のITが遅れていると気付いたんです。そこはチャンスだと思いました。また、学生のときに色々なエンジェル投資家と仲良くしていて、話をする中で「日本をよくするには教育と投資国家になるしかない」と。僕は後者をやるべきだと思い、金融を海外に効率的にまわすことが大事、円滑にまわすための仕組み作りが必要なのではと思いました。

金融業界の情報が送れていると思った部分は、本質的なところでいうと、分かりやすい金融情報がないということです。また、具体的にはインターンをしていていたゴールドマンサックスが、WEB業界が使いづらいということで敬遠していたIE6を使用していたことに驚きました。WEB系のエンジニアにすると、遅いし、モダンじゃないのでありえない。表現力が高いサイトを作りたい場合に扱いづらいんです。基幹の仕組みをIE6で作ってしまったがために仕方のないことのようですが、トップ企業がそういったものを使っていること自体がびっくりでした。

そのような経験から、金融業界の情報を使ったビジネスとして、株価などの無料で公開されている上場企業の財務情報や適時開示ニュースなどのデータをまとめて、再利用しやすい形で公開するサイトを作ったりしました。

■出会いから生まれたサービス

その後は、studio ousia(http://www.ousia.jp/ja/)で働いたりしましたが、起業することになりました。

しかし、「これがやりたい」というよりも、作るものを決めないで起業したタイプなんです。前職を辞めてどうしようかなと思っていたときに、エンジェル投資家が起業するのであれば出資くれるという話があったこともあり起業しようと。そこから自分の興味の領域を模索していきました。「出会い」から起業したといっても良いですね。

更なる「出会い」もあり今やっているセゾンとのサービスが生まれました。

コイニー(http://coiney.com/)株式会社の社長である佐俣さんの旦那さんが長く知っている大学の先輩で、起業するときに手伝わせてくださいとお願いし、3ヶ月くらいお手伝いしたのですが、コイニーのプロットタイプを作りました。その対価として、決済の仕組みなどを教えてもらったり、人を紹介してもらったりしました。色々な人の話を聞いたり、仕組みを学んだりする中で、今のビジネスモデルである決済データを使ったマーケティングというものを見つけ、カード会社への提案を始めました。

カード会社ではなく店舗からお金をもらっています。カード会社からはパートアライアンスとしてデータをもらい、そのデータを使って、加盟店と呼ばれる店舗からお金をいただくモデルになっています。もし、今後事業会社と手を組んで行くのであれば、Tポイントやポンタかなと思います。

■これから先もお金の回し方を良くすることを考えていきたい

社会的な課題は、昔思っていたことと変わらず、「教育と投資」だと思っています。個人の消費をよくしようというアプローチに変わりましが、根本的な考え方は変わっていないですね。お金の回し方をよくしていきたいという思いです。

証券会社も銀行も、手数料を稼ぐビジネスは今後枯渇していくと思っています。そうなると、他のビジネスモデルが必要になってくる。そこで、データを使ったマーケティングをひとつの大きな軸にすべきかなと思っています。別の領域でのデータ活用、例えばカード会社だと与信管理などにも使えるかなと。今は広告とのマッチングという部分をやっていますが、他にも模索している最中です。

■過去のデータではなく、未来を見据える

過去のデータではもう古いんですよ。分析をしても傾向値は分かるかもしれないが、分かることが少ないんですよ。それよりも、リアルタイムでどうユーザーが動いていくか導線の設計などを得ないという流れがあるので、どのようなデータを取りにいくか、作りにいくかということが大事になってくると思います。そういうことを踏まえると、WEBメディアもっているところを次のフェーズとしておさえていかねばならないです。具体的には、ユーザーがどういうことに興味をもっているのかというアドテクと、カードの決済データのようなハードコアなデータの分析の両方をやっていかなければいけない。それをトータルでできている会社は日本にないですね。しかし、これから先、進めていかないと外資系のP&Gなどが参入してくると勝てなくなるので早くやらねばならないです。

実際に、カード会社との連携を進めています。データを増やしつつ、アドテク連携を進めている最中です。決済データとアドテクのひもづけのスキームは既にできています。

他には、投資+購買でうまれる送金という部分に、最近は興味があります。送金の効率化ができると色々なことがスムーズに動いていくと思っているからですね。

■生の消費データを扱うことの楽しさと、そのためのストレス

興味のあることといえば、セゾンからもらった購買履歴をいじっているときが楽しいですね。生の消費データを扱うことができるのはとてもワクワクします。

一方、ストレスを感じていることもありますよ。カード業界はITリテラシーがどちらかというと低い方で、セゾンの方と話してているとシステムの話をするのに時間がかかります。日本の企業はそういうところが多いので、どうやったら伝わるのかなどは意識していかないといけないですね。

■健康に気遣っています

ほぼ仕事をしているので、自分のプライベートにはあまり興味がないですが、最近嬉しかったのはセブンイレブンがサラダチキンを売り出してくれたということですかね(笑)。200円でカロリーが低めで、かつお腹がいっぱいになり、美味しいチキンなんですよ。

去年すごい流行ってしまって売ってなかったのですが、最近また買えるようになって嬉しいです。

他には、気分転換にオフィスで2日に1回くらい卓球をしています。机の長さがちょうどよくて。部長と一緒にやることが多いですね。ずっと、オフィスをもったら卓球がやりたいと思っていたんです。元々テニス部だったので、ラケット競技がやりたかった。カジュアルに室内でできるスポーツは、ビリヤードとかもありますが有酸素運動にならないので卓球を選びました。気分転換しつつ、痩せたいという想いからです(笑)。大学4年の頃から7キロくらい太ったので・・・。なかなか運動をする時間がないので、意識的に運動をするようにしています。

■人がやらないこと、できないことを成し遂げたい

昨日ウォーターサーバーの水が切れていることに気付かず、カップラーメンを買ってきてしまって「失敗した!」と思いましたがプライベートで失敗って思いつかないです(笑)。自分のことにあまりフォーカスしたことがないので分からない。自分の感情にあまり興味がないんです。さーっと流れていっちゃいますね。作るものに自分のポリシーは表現しますが、感情は表現する必要がないので興味がないのかもしれないです。95%作るものにフォーカスしないと突き抜けられないと思っているので、私生活にはフォーカスしたことがなかったです。

そんな中で、仕事の原動力になるのは「人の作れないものを作ってびっくりさせたい」という想いです。小学校の頃から、自由研究などで驚かせてやろうという気持ちがありました。例えば、鉛筆の芯を当時の舎弟のような子に掃除の時間などに拾ってもらって銅像のような物を作ったり(笑)。5,000本くらい集めましたよ、おそらく。昔から、人のやらないことや、ないものに魅力を感じるのだと思います。/p>

■エンジニアのスクールカーストは底辺・・・

大学4年生の頃に読んだ、「ハッカーと画家」という本は名著だと思います。ポール・グレアムという「Y Combinator」を作ったエンジェル投資家で、自身もエンジニアとして起業してYAHOO!に売却をしたという経歴を持っている人が書いた本です。いわゆるのエンジニア起業家の神といわれる人が、エンジニアの生態を描いています。スクールカーストは一番下だったよね、プログラミングしているときに話しかけられるとブチ切れるよね、とかそういう話が書かれたエッセイのようなものです。読めば、エンジニアの本質が分かると思います。共感する部分が多かったです。エンジニアは読むべき本だと思いますね。

■ネガティブさを大事に

「ハッカーと画家」の注釈に書かれていたもので印象に残っている言葉があります。「私が知っている偉大な仕事をなした人は、自分はダメだが他の皆はもっとダメだと考えている」自分が一番すごいもの作れるぞと思っているという話なんです。自分に対してはネガティブに考えるべきですが、ただもっと世の中良くできるよねという場合もネガティブさを出さないといけない。

でも、言葉って苦手なんですよ。
脳が、空間や絵を覚えることに最適化されているようです。言葉を覚えたり、人の名前を覚えたりするのは苦手です。顔やエピソードを覚えるのは得意なんですがね・・・。

■ あとがき

八巻さんはとてもフランクに分かりやすくお話をしてくださいました。自分の感情に興味はないと言っていたのも印象的でした。
消費者の過去と未来の分析を進めていくことは必須で、その先駆者として人がやっていないことを成し遂げて下さると思います。

株式会社カンム 代表取締役 八巻 渉さん

カンムは「決済×アドテク」をテーマとしたマーケティング企業です。Card Linked Offer(クレジットカード決済連動型優待)と呼ばれる、実店舗への送客プラットフォームを日本で初めて開発・運営しています。